当院における転倒転落の要因分析と対策

医療法人 久康会 平田病院
高萩 三紀恵 (PT) 小宮 雅樹 (PT) 森 千秋 (PT) 柳田和宏(RN)
松澤伸治(薬剤師) 吉田 由記子 (PT) 濱田 秀年 (PT) 山村 梓州江(OT)
木村 勲 (PT)

【 はじめに 】

 当院では医療安全委員会を中心に、院内での事故防止に努めており、転倒対策委員会は、より患者の身体機能面に合った対策を立てていけるよう、セラピストを中心に構成しています。病棟での転倒転落事故の傾向としては、トイレ動作に関する事故が多く、今回その 内容についてみていきました。また、そこに関わる患者の身体機能、精神機能、日常生活動作能力の傾向をみたことで、今後の対策を検討しましたので、ここに報告します。

【 当院での取り組み 】

 現在当院では、入院時に自立度別の環境設定を実施し、転倒転落の危険性をリスク評価表にて評価し、アルゴリズムを用いて転倒防止の為の対策を立てています。

 入院中は、日々各スタッフ間で情報交換を行い、転倒リスクの高い患者に対しては、離床センサーマットや低床ベッド・マットを使用し、ポータブルトイレは設置基準をもとに使用しています。

 事故に関する情報は、パソコン管理上のインシデントリポートにて各部署の責任者が確認し、医療安全委員会に報告しています。

【 B)-@ 病棟での転倒転落事故 (H.18.9.〜.19.5.)

 次に、病棟での転倒転落事故内容について報告します。対象は平成18年9月〜19年5月の間に起こった転倒94件、転落60件の計154件、そこに関わった入院中の患者71名です。

【 B)-A 事故重症度別発生件数 】

 事故を重症度別に分類しました。当院における重症度別基準は、スライド上方のようになっています。スライド左下方が病棟での転倒転落事故をレベル別に表したグラフです。

 実際転倒転落に至った事故はUレベル以上になりますが、全体の半数近くに上っています。スライド右下方はUレベル以上の事故を場所別にみたものですが、病室での事故が過半数を占めていました。

【 B)-B 発生時間別件数 】

 次に事故発生時間について、最も多かったのが20時、次いで 14 時・ 15 時・7時でした。

【 B)-C 発生場所別件数 】

事故の起こった場所については、病室での事故が最も多く、次いで病棟トイレ・病棟廊下・食堂での事故でした。154件の事故のうち149件が患者1人の時に起きた事故でした。

【 B)-D 病室での事故時の動作内容 】

 特に事故の多かった病室での事故における動作内容をみると、移乗時が 25 件、次いで原因がわからないもの、起居時の順に多い結果でした。

 移乗・移動・更衣時の事故は、トイレに行こうとして起こったものが多く、トイレでの事故件数と合わせると、トイレに関する事故が最も多いということがわかりました。

【 C)-@トイレに関する事故 】

 次に、 1 人でトイレに関する事故がどこで起きたものかみると、ポータブルトイレでの事故9件、トイレでの事故5件、病室トイレ及び廊下トイレに行くまでの事故13件でした。

【 C)-A 事故発生時間 ・事故時の動作内容 】

 次にトイレ事故発生時間と、事故時の動作内容についてみていきます。

 スライド左が事故発生時間についてのグラフになりますが、ポータブルトイレの事故とトイレに行くまでの事故は、夜間帯に、トイレでの事故は日中に多いことがわかります。スライド右側の円グラフは事故時の動作内容についてですが、トイレでの事故はトイレと車椅子間の移乗時に、トイレに行くまでの事故は移動時が最も多い傾向にありました。

【 C)-Bトイレ事故患者情報 】

 対象者の、身体機能面、精神機能面、基本動作能力、移動能力、ADL能力をみていきます。詳細はスライドの通りです。

【 C)-C 患者内訳 】

 スライド上方は疾患別分類で、スライド下方左が日常生活自立度別、右が長谷川式簡易痴呆スケールの結果です。日常生活自立度レベルはすべて B レベルの患者でした。

【 C)-D 動作能力 】

 次に、ポータブルトイレでの事故患者の、身体機能・基本動作能力・ADL能力についてです。各項目におけるレベルを自立〜非実施まで5段階に分類しました。排尿コントロールは介助が必要で、起き上がり・椅子座位・移乗・立位保持は半数近くが自立レベル、更衣動作は監視〜介助レベルの患者が多い傾向にありました。

 次に、トイレでの事故患者についてみると、ポータブルトイレでの事故患者に比べ、移乗や立位保持など立位動作時の介助が必要なレベルの患者が多い傾向にありました。

【 C)-E ナ ースコールを押さなかった理由 】

 次に、トイレ事故患者がナースコールを押していたかどうかについて確認したところ、全ての患者が押すことができていませんでした。

 職員を呼ばなかった理由については、一人でできると思っていた方や、認知面・高次脳機能障害により理解力が低下していた方が多い傾向にありました。

【 まとめ 】

  • 転倒転落事故の分析、及びその中で最も多かったトイレ事故の傾向をみていきました。
  • 病室における転倒転落事故が多く、その中でもトイレに関しては病室でのポータブルトイレに関する事故が多い傾向にあり ました。
  • トイレ事故Uレベル以上で、一人で事故を起こした患者は、職員が自立レベルと判断していたが事故につながっているケー スがありました。ポータブルについては使用基準をもとに設置していましたが、事故に繋がっているケースもあり、ポータ ブル設置基準の見直しが必要ということがわかりました。また、トイレ事故患者はナースコールを押すことができていない こともわかりました。

【 今後の課題 】

 今回の結果により、ポータブルトイレの設置基準やコールを押せる患者かどうかの判断、押せない場合の対策等、管理体制が不十分であることがわかりました。

 まずは、今回の結果をもとに、日中・夜間帯の状況を考慮し、使用するトイレ場所やポータブルトイレの設置基準を見直し、精神機能面の低下によりコールが押せない・自己判断により推さない患者に対して、離床センサー等による対応や適切な環境設定ができるようセラピストも介入していきたいと思います。

 また、アルゴリズムの中で環境面に対する対策が不十分であったことや、患者が一人で事故を起こした際の原因追及や環境面等についての情報が収集できない事も分かり、転倒対策委員会におけるシステム見直しは早急に対応していきたいと思います。

 今後も、転倒転落事故ゼロを目指して、継続して事故対策に努めていきたいと思います。